「訓練所に預けたけど、家に帰って来たら元に戻った」「しつけ教室に通ったが、トレーナーの言うことは聞くけど、私のいうことは聞かない」などの話をよく耳にします。
私もわん子たちを日中お預かりしてレッスンを行うので、「犬を預けると先生の言うことは聞いても、飼い主の言うことは聞かないのでは?」という質問をよく受けます。
今から17年前、しつけ教室を始めた当時の私は、訓練所で習った「服従訓練」というものを、そのまま飼い主の方に教えていました。
服従訓練とは、命令に従わないとリードを強く引っ張り、首にショックを与えて強く叱り、服従する精神を植え付けて主従関係を強要するというものです。
この服従訓練を受けた犬の特徴は、「怖い人の言うことは聞いても、怖くない人の言うことは聞かない」ことです。
私が訓練所で勉強していた頃、犬が私の指示に従わないと、すかさず校長から「君が犬になめられているから、犬がいうことを聞かないんだよ」と、よく言われたものです。
そうして、私が訓練所で身につけたものは、犬の心を無視した「犬の操縦法」でした。そして、私はしつけではなく、犬の操縦法を飼い主の方に教えていたのです。
今、私は犬の「行動」に目を向けた訓練ではなく、飼い主が学ぶしつけ教室として、犬の「心」に目を向けたレッスンを行っています。
その「犬の心」を飼い主の方に理解してもらうこと、そして、命令ではなく愛犬の心を育み、コミュニケーションの取り方を学んでもらうことが私の一番の仕事です。
しつけ教室は※基礎を学ぶところです。しつけ教室に通いさえすれば、犬がお利口になるのではなく、飼い主がトレーナーから学んだ基礎を、日常生活という応用の場でどれだけ実践できるかが大切なことなのです。
※ 基 礎 = この基礎に対する考え方が、訓練士やトレーナーによって大きく異なるのが実情。