現在の家庭犬のしつけの方法は、犬に何かをさせる訓練が基盤となっています。訓練は服従訓練と呼ばれ、命令に忠実に従わせ、主従関係を築くことが特徴です。
訓練は、常に緊張感の中で行われ、指示の出し方も「座れぇ!」「待てぇ!」と厳しく言わなければなりません。また、この訓練で必ず言われることが、
・玄関を出るときは飼い主が先
・飼い主より先に歩かせない
・食事は飼い主が先で犬は後
・犬と一緒に寝てはいけない
などですが、これらのことは、家庭犬のしつけとは何も関係がありません。
そもそも、この服従訓練の目的とは、使役犬になるためのものです。使役犬とは、警察犬や盲導犬など、人のために働く犬のことです。
使役犬である限り、上司と部下という一線を引いた主従関係が必要になります.しかし、人のために働くことのない無職の家庭犬との暮らしには、訓練も主従関係も必要ありません。
家庭犬は、毎日遊ぶことが仕事です。家庭犬の一生は、毎日が夏休みなのです。
使役犬として、命令に従わせるための訓練と家庭犬として、共に暮らすためのしつけは、まったく別なものです。
共に暮らすためのしつけとは、人に飛びつかないとか、台所に入ってはいけないとか、他の犬と上手に挨拶ができるとか、日常生活でのルールを教えることです。
人と犬は、文化も習慣も、そして、コミュニケーションの手段も違います。そんな人と犬が一緒に暮らすわけですから、犬をしつけようとする前に、飼い主が正しい知識を学ぶことです。
そうして初めて、しつけに対する適切なアプローチと、問題への的確な対処が出来るようになるのです。子供のしつけにも犬のしつけにも、近道はありません。そして、犬のしつけは、飼い主次第です!