■禁止のしつけとは?~犬に正解を教えるということ~
ここでいう正解とは、「飼い主が望むこと(やってもよいこと)=正解」になります。そして、その飼い主の望むことを表す言葉が、「グ~ド!」と肯定することになります。そうして褒めてあげることで、犬(人も)はその行動を繰り返したいと思います。
反対に、犬が何か好ましくない行動を行った時は、「飼い主が望まないこと(やってはいけないこと)=間違い」となり、それを表す言葉が「ノー」と否定することになります。しかし、犬を叱るだけでは、良い行動が身に付くことはありません。
なぜなら、犬は反省と後悔ができないので、間違った行動をどう改めたらよいかはわかりません。ここが人間と違うところです。多くの飼い主が犬を叱ってしつけようとしますが、叱って犬がお利口になるなら誰も苦労はしません。
大切なことは、犬に「ノー」と間違いを注意したら、必ず正解を教え「グ~ド!」と褒めて終わることで、犬は飼い主が何を望んでいるのかを理解し、「駄目がきちんと理解できる子」に育っていきます。
犬が吠えた時に、「音のする缶を投げる」とか、何かいたずらをした時には、「マズルをつかむ」など、罰を与えるだけのしつけがいまだに残っています。しかし、何が悪いかの理由づけが出来ない犬を叱るだけでは、何が悪いかは永遠に理解できません。したがって、同じことに対して毎回叱らなければならなくなります。
では、正解を教えるとはどういうことでしょうか?
実際に練習してみましょう。まずオヤツを用意します。少し大きめがいいです。次に犬にリードをつけて短く持って下さい。そして、オヤツを犬の鼻先に持って行き、匂いを嗅がせたら、30センチほど前に放ります。
当然犬は食べに行きますので、リードで犬の動きを止めると同時に軽く「ノー」と注意して下さい。決してきつく叱らないで下さい。何故なら犬は悪いことをしている訳ではないからです。
オヤツを回収したら、もう一度オヤツを犬の前に放って下さい。犬がまたオヤツを食べに行ったら、また軽く「ノー」と注意をします。これを繰り返し行うと、早い子で3回目には学習し、オヤツを食べに行かなくなります。
何回目かに犬がオヤツを食べに行かなかったら、すかさずオヤツを拾って「グ~ド!」と褒めてからオヤツを与えて下さい。稀に10回以上繰り返さないと学習しない犬もいますが、大抵は5~6回繰り返すと食べに行かなくなります。
そして、これは拾い食いをしてはいけないという「禁止のしつけ」になります。勝手にオヤツを食べに行くことが間違いで、食べに行かないことが正解ということです。
犬は学習する生きものです。その学習とは、人も犬も何回も繰り返し教えることで理解し、身に付いていくのです。最後に、私が「盲導犬訓練士」多和田 悟氏から教わった言葉を紹介します。
「No」は教えなければならないが、「No」で何かを教えることはできない。