今から60年前に発行された本で、1989年に再出版されました。
著者がまえがきで「犬は私たちの、もっとも親しい友であるのに、案外、その生態がよく知られておりません。」と記述していますが、60年経った今日でも犬の生態については、全く知られてはいません。
犬が吠えた時や何か良くない行動をした時に、「マズルをつかむ」「首根っこをつかんで持ち上げる」「音で驚かす」などの対処法がいまだに行われています。
先日私の所にカウンセリングに来られた方が、これらの対処法を他のトレーナーに教わったと聞いて、教える側のレベルの低さに愕然としました。
これらの対処法は、犬を家畜として扱うことを前提としたしつけの方法なのです。よくテレビや映画の中に登場する犬たちは、飼い主にとても忠実で擬人化されて描かれています。
そんなイメージが強いせいか、多くの方が「犬は人間のようにものを考えることができる」と思い、犬に反省を求めるしつけを行ってしまいます。しかし、「何が悪かったのか?」の理由づけと、反省ができない犬をいくら叱っても一時的にやめるだけで、犬は悪い行動をどう改めればよいかはわかりません。
したがって、同じことに対していつまでも叱り続ける結果にしかならないのです。まして、叱って犬がお利口になるくらいなら誰も苦労はしません。また、しつけの本やDVD、テレビや人から聞いた情報などで犬を動かそうとしても、なかなか、あなたの望み通りには動いてくれません。なぜならそれらの情報は、あなたのワンちゃん専用に向けられたものではないからです。
さらに、飼い主の性格や、各家庭の犬に与える生活環境もそれぞれ異なるので、よその家で上手く行った方法が、自分の犬にもうまく行くとは限らないのです。インスタントにしつけようとする「家畜化」としてのしつけと違い、「家族化」としてのしつけに近道はありません。
しつけの基本は、して欲しくない事を叱って教えようとするのではなく、犬が覚えるまで、ただひたすら正解を根気強く教えることです。そうして育てられた犬は、飼い主の望むことと望まないことを、きちんと理解できる犬になるのです。
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